実在した超巨大サメ「メガロドン」vsジェイソン・ステイサムで話題の海洋SFモンスター映画を見て来ました。
サメ映画を見るのは久しぶりで、最近は「シャークネード」などのイロモノ映画しかなかった印象でしたが、「MEG」はなかなかどうして、しっかり正統派サメ映画やってました。
以下、ネタバレ含みレビュー書いていきます。
追いかけられ、足が思うに任せない悪夢
サメ映画というジャンルのホラー界における存在意義として、海を舞台にすることで、人間の身動きが圧倒的に制限されてしまうという点があげられると思います。
よく何かに追いかけられる悪夢を見る時、全速力で走っているのに足がついてこないということがあると思いますが、水の中でサメに追いかけられるというのはまさにこの悪夢の状況そのものなんですね。
実際問題として、「サメ」というのは他のホラー映画のモンスターと比較すれば特に強いというわけでもなく、いくら大きくても銃で死ぬし、知能も低い。
しかし、水中で身動きがとれず、しかも遮蔽物も何もない海のど真ん中で、自在に泳ぎ回るサメに襲われるという恐怖は、陸上でどんな強力なモンスターに襲われる状況と比較しても相当に大きなものです。
しかしこの恐怖感を演出しようとすると、その方法はかなり限られてしまい、そのほとんどはスピルバーグ監督の傑作「ジョーズ」で最初からやり尽くされてしまった感もありました。
そんなサメ映画の後輩たちが偉大すぎる先輩から独り立ちするために編み出した手段こそ「メガシャーク」であり「シャークネード」であり、ある意味では革新的なシリーズだったわけですが、もはやホラーとしての体はなしていません。(好きですが)
この「MEGザモンスター」は、久方ぶりに真っ向勝負の正統派サメ映画として、偉大な先達に迫ることができるか、という点がまずひとつの見どころと言えます。
ステイサムの安心感と、反比例する脇役の不安感
本作の主演はご存知ジェイソン・ステイサム。
「トランスポーター」「エクスペンダブルズ」などでお馴染みの、基本出てくると死なない系オヤジです。
とにかく服は脱いでも主人公補正は脱がないステイサム。
劇中、ステイサムがメガロドンに向かって生身で泳いでいくというひどい場面があるのですが、その時でさえただよう安心感たるや。
下手すると勝ってしまうのではと逆にハラハラします。
あ、各所で言われていますが、元飛び込み選手だったステイサムのフォームはやはり綺麗でした(笑)
あと、子供に見せる笑顔がイイですね。
そういう意味では、「主人公の危機にハラハラする」という場面においても我々はステイサムに全幅の信頼を置いて見ていられるので、ホラーの醍醐味もなにもあったものではありません。
ただ、その副作用というか、脇役の死にそう度がいっそう際立つ結果となっており、そっちではなかなか気を揉ませるのがうまい演出となっています。
もっとも、一番ハラハラしたのがワンコがメガロドンに追いかけられてる場面だったので、不安を煽る演出がうまかったかと言われると「それなり」というしかありません。
逆に言えば、あまり気を張らずにポップコーンをぱくつきながらでっかいサメが暴れるさまをながめられる映画ということもできますね。
ふんだんに投入された最新海洋SFガジェット
でかいサメはそれだけで見ていて飽きませんんが、この映画のもうひとつの見どころとして近未来的な潜水艇などのガジェットの魅力があります。
昔はガンダムでしか見られなかった全面モニター式の操縦席が、ほとんど現代の設定の作品で違和感なく投入されているのがたまりませんね。
もっとも、このモニターはホラーとしてみると閉塞感に欠けるので、やはり近未来海洋サファリ体験として見たほうがこの映画は楽しめるような気がしてきました。
クジラもいるしね!
それにしても、この洗練された最新ガジェットを運用して違和感のない中国。
「神舟」計画で宇宙分野での技術の大躍進を見せつけた中国ですが、いまやハリウッドの認識においても最新ガジェットの担い手というイメージへと変わってきているんですね。
「トゥームレイダーファーストミッション」における日本を扱う手つきの雑さと対照をなしているような気もします。
凡作ながら安心してサメを眺められるサファリ映画
総評としては、久々の正統派サメ映画として手堅く作ってある反面、突出した部分もない「良作」どまりの映画という印象でした。
ただやはり売りであるメガロドンの巨大な「口」の演出は、巨大なものへの根源的な恐怖と興味を煽りますし、古代に実在した怪物を現代文明と出会わせるという意味での画面作りは大成功していたと思います。
特に海水浴中の人々の真下をよぎる巨大なメガロドンの影という空撮にはワクワクしました。
すれっからしのオタクには恐怖感は足りない作品だと思いますが、そうでない人には十分怖い良質なサメ映画かと思います。