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日本でアベンジャーズは可能か?日本のクロスオーバー文化を見る

レンタルが始まった「アベンジャーズ/インフィニティウォー」を見て、やっぱり「アイツも出る!こいつもいる!」というオールスター感はたまらなく楽しいと思いまして。

 

で、やはり考えてしまうのが、「日本でアベンジャーズのような映画は作れないのか?」ということ。

「アベンジャーズのような」とはどういうことか?

・各々が独立した作品でそれなりの人気と知名度を持ったキャラクターがクロスオーバー

・物語にがっつり絡み、他のキャラクターとがっつり共演

・個々の関係性の物語が全体としての大きな結末へ向けて進んでいく

というのがおおよその要素かなと思っています。

 

というわけで、現状の日本のクロスオーバー文化を知る限りで挙げていきつつ、上記のような作品が日本で生まれる可能性を探ってみたいと思います。

 

ジャンプオールスターは映像化可能?

まずは週刊少年ジャンプ。

映画「アベンジャーズ」はマーベルコミックのキャラクター達の実写化及びクロスオーバー作品なのだから、日本版アベンジャーズといえばやはりジャンプヒーローのオールスターを真っ先に夢想しますね。

しかしマーベル作品とジャンプ作品の大きな違いは、マーベル作品が「同じ世界を共有している」のに対し、ジャンプ作品は個々に独自の世界設定を持っている点です。

アイアンマンとスパイダーマンがすぐ隣に住んでいるような距離感なのに、悟空とルフィは次元を超えてようやく会える。

やはり彼らを「同じストーリー上で」共演させるのにはこの点がネックになるでしょう。

 

実はジャンプオールスター的な企画はゲームではかなり展開しており、古くは「ファミコンジャンプ」、最近では「ジャンプフォース」が開発中です。

しかし、漫画なりアニメなり、しっかりストーリーを作り込んだ物語での共演は、今のところ難しそうです。

(「ジャンプフォース」は異世界に飛ばされたヒーロー達の物語らしいので、物語も期待できるかもしれません)

 

日本のゲームにおけるクロスオーバー事情

ゲームでのクロスオーバーでいえば日本は海外に比べ圧倒的に進んでいます。

今日本で知名度的にも最も大きなクロスオーバー作品といえば「スパロボ」と「スマブラ」でしょう。

 

「スパロボ」は、メカモノであるならばほぼ全ての作品を物語に取り込むことができる異常な懐の深さを持っています。

物語としても、各作品のキャラクターと設定が絡み合い一つの大きな結末へ向かうというものです。

先に挙げた「アベンジャーズ」の条件を現在最も満たしているのは、実はこの「スパロボ」シリーズと言えるかもしれません。

ただやはりゲームだから出来ているという側面はあるだろうし、これをそのままアニメとして作ることができるかというと難しいのでしょう。

 

「スマブラ」もやはり日本が世界に誇る大型クロスオーバータイトルで、今や任天堂どころかゲーム業界のオールスター出演といった感もありますが、「物語」ではありませんので、「アベンジャーズのような」という定義からは外れますね。

もちろん参戦キャラ発表時のファンの熱狂は大好きですが(笑)

ゲームは大好きですし、これらの作品を全く否定するものではないのですが、やはりテキストではなく、肉声で、バリバリ動きながら台詞が絡み合うクロスオーバーを見たいというのが正直な欲望です。

 

日本のヒーローは世知辛い?

では日本が誇る正義のヒーロー、仮面ライダーやウルトラマンではどうか?

どうか?というか、もう散々やってますね。

日本版アベンジャーズに最も近いのはこれらの作品群でしょう。

毎年夏には各ライダーがクロスオーバーする劇場版が公開され、近年は戦隊まで取り込んでの一大ヒーロープロジェクトとなっています。

ウルトラマンは、世界観を共有しつつ個々の作品が作られていった、ある意味で最もマーベルコミックに近い成り立ちのタイトルでもあります。

 

実は日本ではすでに日本版アベンジャーズがいくつも公開されていた、という結論になりそうですが、今ひとつ納得いかないのはなぜでしょう。

日本の特撮界が素晴らしい仕事をコンスタントに送り出している人材の宝庫であることを承知の上で言ってしまうと。

やはり、規模が。

僕は特撮マニアというわけではないので詳しくは知りませんが、どうやら予算が相当カツカツのようで、どうしても今のライダーやウルトラマン映画は、ハリウッドや日本の「大作」に比べれば「大作」とは言えません。

(出来のよしあしとはまた別の問題です)

 

アベンジャーズがアベンジャーズたる所以の最後の条件として、やはり「超大作であること」があると思うんですね。

他の映画と同じ1800円で、その映像が観れるというこの上ない贅沢感。

これは、映画の良し悪しとは別ベクトルの贅沢感です。

 

同規模とは言わない、せめて「いぬやしき」や「るろうに剣心」レベルの制作費で平成オールライダーとかやってくれたら、それこそ日本のアベンジャーズになり得ると思うのですが、どうなんでしょうか。

スーツだけでなく中の人をオリジナルキャストで集結出来ればかなり豪華感が出ることはこの間の劇場版でわかりましたし、もし歴代平成ライダー中の人全員集合できたら、もうアベンジャーズとかどうでもいいレベルで興奮すると思うんですが……。

 

そういえば「HiGH&LOW」劇場版を見ていた時、平成ライダーに予算をブッ込んだらこんな感じになるかもなーとぼんやり思っておりました。

源治とか完全に怪人でしたね。

 

オールスターに向かない戦争もの

世界観を共有しつつ、違うクリエイターが個々の作品を作り続けているコンテンツには、例えばガンダムの宇宙世紀ものがあります。

1年戦争を舞台にした物語はそれこそ無数に作られ、いわゆる正史のキャラがカメオ出演するようなクロスオーバーは随所で見られますが、アベンジャーズ的なオールスター感とは相性が悪いでしょう。(やはりその辺の欲望はGジェネやスパロボなどのゲーム作品がカバーしています。)

 

期待の新ユニバース「Fate」

もう一つ、いわゆるシェアードワールドの手法でコンテンツを拡大している作品が「Fate」シリーズです。

近年はFGOがすっかりメジャーなゲームとなりましたが、そもそもの原作の奈須きのこ「Fate/Stay night」の他、虚淵玄作による前日譚「Fate/ZERO」や三田誠「ロードエルメロイ2世の事件簿」などなど、複数のクリエイターが同じ世界観を共有しつつ独自の作品を発表しています。

これらはもともと同人作品であったこともあるのでスピンオフの要素が強いが、「Fate/Apocrypha」や「Fate/EXTRA」ではパラレルワールドが舞台になるなど、独自の展開を見せる作品もあります。

さらに言えば、「Fate」世界は奈須きのこによる「月姫」や「空の境界」とも世界観を共有しており、これら関連作品のキャラクターが一堂に会すれば、相当のオールスター感が出るのではと期待してしまいます。

(「カーニバルファンタズム」がありますが、ガチアクションも見たい!)

FGOはオールスター感がありますが、やはり映像作品でのクロスオーバーを見てみたいですね。

このシリーズの場合、映像化の前にまずそういった小説なりテキストが生み出される必要があると思いますが。

「様々な英雄を一堂に集めて戦わせる」というFateのシステム自体がすでにオールスター的ともいえるので、今後も期待はできると思うんです。

やはり特撮界に期待か

以上見てきましたが、振り返ってみればなかなか難しい現実が待っていましたね。

逆に言えば「アベンジャーズ」がいかに巨大な物量投下による力技であるかをまざまざと教えられた気分です。

金か、金が全てか。

まあお金は大事ですよね。ほんと。

 

こうしてみると、ある時日本のヒーロー業界に風雲児が現れて、莫大な資金を投じて超豪華なオールライダーかウルトラマンを作る、という筋描きはありえそうな夢にも思えてきませんか。

 

というわけで本日の妄想はここまでにしておきます。

ゴジラvsガメラをまだ待っている筆者でした。