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今日のマッコール日記。「イコライザー2」ネタバレ感想

アントワーン・フークワ監督、デンゼル・ワシントン主演「イコライザー2」を見てきました。

元CIAの凄腕エージェントで、死を偽装して抜け出し、今は穏やかな日常を送るロバート・マッコールを描くアクション映画のシリーズ第2作。

アメリカのテレビドラマシリーズ「ザ・シークレット・ハンター」を原作としていますが、今シリーズは続編ではなくリメイクとなります。

以下、ネタバレにも触れながら感想を述べていくので、未見の方はご注意ください。

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相変わらず美しいテキパキ殺人

なんといってもシリーズの売りである、「瞬時に段取りを組んだ上で反撃を許さず瞬時に制圧する」アクションは健在でした。

今作ではマッコールはほとんど傷らしい傷を負っていません。

今作では敵もまたかつてCIAで同じチームを組んでいた殺しと戦闘のプロなのですが、前作のロシアマフィアのほうが何かと健闘していました。

ほんとに、手際が美しいとしかいいようがなく、熟練の料理人の仕事を眺めているかのような気持ち良さがあります。

苦戦しない、というのはこの映画に関して言えば正解かもしれなくて、この仕事の手際が邪魔されてしまうよりは、マッコールにはひたすら気持ちよく仕事に没頭していただくほうが見ていて楽しいんですね。

だから、手に汗握るアクション、というよりは仕事人の仕事を愛でる映画と言えるでしょう

 

2作目の宿命を突破できなかったか

ただ、全体的な評価はというと、あまり高くは付けられないなという感想です。

前作「1」の面白さと衝撃は何によってもたらされたかというと、

 

1、テキパキアクション

2、マッコールのストイックな生活と苦悩、隣人との交流

3、ナメきった態度の悪党をブチのめす快感

4、ホームセンターでの残酷無惨ホームアローン

 

という、大雑把にこのあたりの要素かなと思うんですが、映画の方向性としては「2」もあまり変わっていません。

監督も脚本も続投のうえ、元々テレビシリーズであった作品なので、当たり前と言えば当たり前なのですが。

では、この辺のウリが「2」でも堪能できたかどうか?

そうでないならば、新たな方面の魅力を発掘できていたか?

結論からいえば、「1」での魅力はやや色褪せ、「2」独自の新たな魅力も今のところ見出せません。

まず、「2」の宿命として、まずマッコールにあまり謎がない。

正体も強さも観客はよくわかっているし、前作のラストである意味吹っ切れたマッコールは、今作では「途方に暮れた目」をしていません。

前作では少女アリーナと「お互いに行く末が見えず途方に暮れている」という共通点から不思議な交感を交わしていたマッコール。

今作でも夢に惑う黒人少年との交流はあるのですが、今回は完全に上からの大人目線。

姉の絵を取り戻したいお爺さんという隣人キャラもいるのですが、いまいち交流というより話を聞いてやって、あわよくば助けてやろうという「下心(?)」が見えてしまうんですね。

この辺の隣人との付き合い方の描写は、断然前作のほうが丁寧で情感に溢れていたように思いました。

ああ、序盤のタクシーに乗ってくる客たちの人生模様的なシーンは、なんとも味わいがありましたね。

マッコールの魅力って、あのタクシーの乗客をミラー越しに見つめている時のような、絶妙な距離の取り方にあるんじゃないかと思います。

その点「1」ではよくわかっていて、その関係性を一歩踏み込むかをマッコールが苦悩するシーンなんかもあって、とてもよかった。

 

3の、「ナメきった悪党をブチのめす快感」は、脚本上の宿命でしょうが、ほとんどなくなってしまいましたね。

今作のマッコールはわりとアグレッシブに敵地に乗り込んで開幕ワンパンするスタイルなので。

なによりメインの敵が元同僚なので油断のしようがないし、むしろマッコールのほうがサイコパスばりに敵の子供と目の前で笑顔で抱き合ったりして脅しかけていくほうです。

なんで、お話としてのラインは復讐劇であるにも関わらず、「倍返しだ!」的なカタルシスはほとんど感じられない。

さりとてプロ同士の高度な頭脳戦や鍔迫り合いがあるかといえば、結果的にはマッコールがいつも通り上手にさばいてしまうだけなので、なんとも微妙な感じです。

 

マッコールの日常は続く

トルコやベルギーに飛んだり、CIAが絡んできたりと舞台立てが壮大なので、この映画は一見国際謀略ものに見えてしまうのですが、よく考えなくてもひたすらマッコールという男の生活の物語です。

日記といってもいいかもしれない。

「今日は女子をレイプしたヤク中どもをぶちのめした」

「今日は壁の落書きを消した」

という感じで、悪党退治と街の掃除が並列するのがマッコール日記の特徴。

ストイックな彼の日記は、たとえ親友のスーザンが殺されたとしてもそのスタイルには影響せず、もちろん深く悲しみはするし、仇も討つんだけど、それはやはりいつもの日常一風景です。

「今日はスーザンを殺した野郎をぶち殺した」というページが綴られるだけ。

なぜそんなふうに見えるかといえば、今作のマッコールにおいては、最初から最後まで彼のスタンスに何の動揺も変化も見て取れなかったからです。

場面場面では悲しみもするし怒りもする。

でも彼の中で決定的なものはすでに出来上がってしまっていて、それはたとえ元相棒だった相手を殺そうと揺るがない。

そういう人間はたしかに見ている分には頼もしいし、この映画の「仕事人を愛でる」というコンセプトには合うのかもしれませんが、この脚本上のスタンスが、この映画を駄作とまではいかずとも、傑作に届かせかねている要因な気がします。

 

こうなると、アクション面で前作を超えていかないと前作越えは難しいのですが、今作にはあの「ホームセンターの賢い使い方・殺人編」ともいうような、地獄のホームアローンのような豊富なアイデアやトラップは息を潜め、マッコールはほとんど肉弾戦で敵を倒してしまいます。

終盤の銛発射や、粉塵爆発らへんはなかなかよかったと思うんですが。

 

とはいえ続編をまだまだ見たい!

前作と比べれば、なんだかまともなアクションになってしまい、ちょっと物足りない感のあった「2」ですが、しかしマッコールという男の魅力が消えてしまったわけではありません。

今作が初の続編主演というデンゼルなので、「3」が期待できるのかは微妙なところですが、個人的にはテレビシリーズとして復活してくれたらいいなとも思います。

久ひざに王道アクションではまったキャラクターなので、もっと活躍が、そして彼の日常が見ていたいですな!