怪盗シネマ

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「怪盗グルー」「ミニオンズ」ミニオン達のモチーフとして見え隠れするユダヤ教の諸要素

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「『怪盗グルー』シリーズの人気キャラクター「ミニオン」のモデルは、実はナチスドイツに収監され人体実験の犠牲となったユダヤ人の子供たちである。」

2015年くらいに、こんな噂がネット上でまことしやかに囁かれた。

根拠として、ミニオンそっくりの帽子を被せられた子供たちの古い写真、ミニオンの話す言葉が意味不明なのはユダヤ人の子供たちがヘブライ語を話す様子と同じ、などが挙げられた。

https://matome.naver.jp/odai/2144150341821614001

この噂について、写真で子供たちが被っているのはナチスと何の関係もない潜水スーツであるということも判明し、結局のところデマであることがわかっている。

噂はすべてデマだったのか?

しかしながら、このデマが何の根も葉もない、真実をかすりもしない与太話だったのかというと、実は根本のところでいいところをついている噂だったのではないかと筆者は思っている。

「ミニオンがユダヤ人と関係がある」という部分だ。

 

「ミニオン」という言葉を辞書で調べれば、「お気に入り、寵臣、子分」とある。

日本のゲームでも、使い魔的な存在に「ミニオン」と名付けられることがあるので、言葉自体は聞いたことがある人も多いだろう。

ところでこの「ミニオン」という言葉、実はユダヤ教と深い関わりがある。

ユダヤ教の宗教的儀式に従事する係のことを「ミニオン」と呼ぶのだ。

「ミニオン」という言葉がユダヤ教由来の言葉なのかまではわからなかったが、「怪盗グルー」シリーズのミニオン達と「ユダヤ教」を重ね合わせてみると、あらためて気づくことが多い。

「最強のボスを求めて世界を彷徨う」というミニオン達の性質は、歴史を通して安住の地を探し求めるユダヤの人々とどこか重ならないだろうか。

ミニオンと72柱の悪魔

ミニオンにはユダヤの人々そのものもモチーフとされている可能性があるが、さらに見ていくともうひとつ、ユダヤ教と関わるモチーフが見えてくる。

映画「ミニオンズ」冒頭では、ミニオン達が生命誕生と同時代から存在し、いかにボスを求めてさまよってきたかが描かれるのだが、ここで筆者が気になった描写として、ミニオンが人類に「技術」を教えているような描写がある。

黎明期の人類にハエタタキのような道具を与えたり、ピラミッドの設計を担当したりといった描写である。

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(C)2014 Universal Pictures.

ちなみに、この一連の描写でミニオンがボスとあおいだ存在たちは、ミニオンの悪意のないいたずらやミスによってことごとく滅んでしまう。

ところで、ユダヤ教の聖典である「旧約聖書」には、かの有名なソロモン王の逸話が記述されている。

ソロモンに仕えたという「72柱の悪魔」もその中の一つだ。

そしてその悪魔たちの中には「人間に知恵を与える」というものもいる。

仕える主人に技術や知恵を与え、そして亡ぼしてしまうミニオンの性質は、こういった伝説上の悪魔に似ているようにも思える。

ミニオンとバベルの塔

さらにもう一つ。

ミニオンが話す、通称「バナナ語」。

日本語、フィンランド語、韓国語、スペイン語など多数の言語がごちゃまぜになって口にされるこの言語だが、「旧約聖書」と合わせて考えることで見えてくるものがないだろうか。

そう、「バベルの塔」の逸話である。

「なるほど、彼らは一つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」。主はそこから全ての地に人を散らされたので。彼らは街づくりを取りやめた。その為に、この街はバベルと名付けられた。主がそこで、全地の言葉を乱し、そこから人を全地に散らされたからである。— 「創世記」11章1-9節

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%99%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A1%94

人類はもともとはたった一つの言語を話していたが、神によって互いが理解できないよう今のように言語をバラバラにされた、という伝説である。

この伝説を裏付けるかのように、様々な言語は太古の一つの言語に起源を求めることができる、という学説もあるという。

「怪盗グルー」の世界において、この「たった一つの言語」こそ「バナナ語」だったのではないだろうか!

ここで重要な点は、「ミニオンズ」冒頭でミニオン達は人類発祥以前から言葉を使っている点だ。

ボスを求めてあらゆる土地を、あらゆる時代を生きてきたミニオン達が、その土地土地の人々になんとなく言語を伝えた結果、人類が言葉を得、長い時間を経ても「バナナ語」の名残が各国語に残っているとしたら。

「バナナ語」は各国様々の言語のミックスに聞こえるが、実は全く逆で、各国の言葉がバナナ語から派生したものだったのだ。

太古、バベルの塔を建てて神に近づかんとした、傲岸たる「最強のボス」の足元にミニオンたちがわいわい群れていたとしても、驚くには値しないだろう。

 

というように、ミニオンという可愛くも不可思議でシュールな不老不死生物を見ていると、しかも公式で人類史と絡めて語られてしまうと、しょうもない想像の翼がばっさばっさと勝手に羽ばたきだして止まらなくなってしまったので、ここに書き留めておく次第。

しかし可愛いなこいつら。