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文明は全ての土地にフェアではない。映画「ウインド・リバー」感想

グーグルアースでアメリカを見ていると、ストリートビューなんかがある都市部はほんとに少なくて、ほとんどの土地はいくら拡大してもなんだかわからない荒野だってことがわかるんですけども。

 

今作「ウインド・リバー」の舞台はそんなアメリカの辺境オブ辺境、ワイオミング州の中にある先住民保留区を舞台にした、重々しくも乾いた叙情性を感じる社会派映画でした。

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この記事では前半はこれから観る人のために押さえておくと理解に役立つ背景情報などを、後半はネタバレも含めた感想を書いていきます。

 

作品情報

主演はジェレミー・レナー、そしてエリザベス・オルセン

ジェレミー・レナーは「アベンジャーズ」でホークアイを、そしてエリザベス・オルセンも「アベンジャーズ」でスカーレット・ウィッチを演じており、奇しくもアベンジャーズ共演コンビとなっています。

監督・脚本はテイラー・シェリダン。メキシコ国境での壮絶な麻薬戦争を描いた「ボーダーライン」という傑作で一躍有名となった人物ですが、監督は今作が初。

 

あらすじ

ワイオミング州にある先住民保留区「ウインド・リバー」。極寒と厳しい自然にさらされる広大なこの地で、野生生物局のハンターとして働くコリー(ジェレミー・レナー)が、雪原の中で少女の死体を発見するところから事件が始まります。

死体はコリーとも顔見知りの先住民の女子高生。

周囲10キロは人家も施設もない雪原だというのに、少女は靴も履かずに歩き続けた末に死んでいました。

コリーと市警察のベンは殺人事件と見て、この地域の殺人の管轄であるFBIへ連絡。

しかしやってきたのは経験の浅い女性捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)一人だけでした。

検死の結果レイプの痕跡も見られましたが、死因は零下30度の中で走って息を思い切り吸い込んだことによる肺の破裂と判明。

この検死結果ではFBIは他殺と認めず動けません。

しかし、ジェーンは頼りなくはあっても非情ではありませんでした。

ジェーンは応援なしで事件捜査にあたることを決意。

コリーも手伝いを求められ、それに応じます。

ただし、コリーは少女の父親に、犯人を見つけたら即座に殺すことを密かに約束していました。

新米捜査官と熟練ハンターが雪の足跡を辿る先に待つ真相。

それは現代社会に見捨てられた土地が抱える深い闇でした。

ウインド・リバー」とは?

ウインド・リバー」は、アメリカのワイオミング州内にある先住民保留区の名称。

雪に閉ざされた極寒の地であり、産業もないため失業率も高く、若者はドラッグにおぼれ、自殺率も群を抜いて高い、未来を奪われたような土地です。

面積は日本の鹿児島ほどもあるのに警官は6人しかおらず、犯罪や野生の猛獣から自衛するために住民はかなりの重武装を自前でしています。

アメリカ先住民はこのような不毛の土地に押しやられ、なすすべもなく日々を生きています。

複雑な警察の管轄制度、広すぎる土地などの影響で殺人やレイプの検挙率が異常に低く、先住民の女性の失踪が続発しているにも関わらず、その統計はとられていないといった体たらくであることが近年になって判明しました。

実質的に連邦政府からも州からも見放されている無法状態であることが、映画の最後に示唆されています。

 

ネタバレあり感想

ここからは物語の結末にも触れて感想を書いていきます。

 

 

監督であるテイラー・シェルダンは、「ボーダーライン」「最後の追跡」という自身が脚本を担当した過去作と本作を同一テーマの3部作と位置付けており、そのテーマとは「アメリカの辺境」を描くというものでした。

今作で描かれるウインド・リバーの地は、ほとんど町と呼べるものもなく、ほとんどが雪と岩で覆われた荒野です。

その神話じみた荘厳な光景は観客を引き込みますが、雪国に暮らしたことのある人間なら、その灰色がかった光景のもたらす寒さ冷たさ、厳しさもまた肌身に感じることができるでしょう。

そんな人を拒否する雪原の真っただ中で、よりによって裸足のまま死んでいた少女。

ミステリーとしていっきに引き込まれる導入ですが、この遺体の状況がそのまま、監督が今作に込めたメッセージにつながっていくことが真相と共に明らかになります。

少女は資源掘削のためウィンドリバーを訪れていた恋人マットといるところをマットの同僚たちに襲われ、レイプされた上に恋人も殺され、一人脱出して逃げている途中で力尽きたのでした。

特筆すべきは、この少女ナタリーが裸足のまま10kmもの距離を雪原の中で歩き続けていたということです。

このことがクライマックスでも象徴的に扱われます。

 

少女を襲った連中は何者なのか?

先住民居留地からは石油などの資源が発見されることがありますが、それらは掘削権を持つ者のものとなり、住民には全く恩恵がありません。

土地には資源掘削のための人員が外から派遣されてきますが、今作の犯人達もまたそのような連中です。

彼らもまた娯楽も何もないこの土地に辟易していたところを、美しい先住民の少女をみかけ、ほとんど軽い気持ちで手にかけたのでした。

警察権がややこしく手がまわりづらいこの広大な土地では、人の倫理はほとんど原始のレベルに堕ちているといってよく、強姦・殺人に対する倫理的な抑制が働かない無法地帯となっています。

この資源採掘と少女強姦・失踪は、ひたすら奪われ続ける先住民たちのあまりに身近な現実です。

主人公コリーもまた、おそらく似たような状況で娘を殺されています。

しかしこの地では、司法は犯罪を裁いてくれない。

コリーは劇中「この世界がフェアだなんて嘘をつくつもりはないが、世界と感情なら感情をどうにかする」という旨のことを言っていますが、このウインドリバーに住む多くの先住民は、おそらく同じような、奪われる側としての諦観と絶望の中で暮らしているのでしょう。

全編を貫く厳しい雪と岩の風景と、奪われる人間達の耐え続ける顔という重さが、静かに画面に横溢します。

そんな中で、希望ともいえないくらいだけれど小さな光となったのが、ジェーンの単独捜査でした。

巌のように揺るがない苛酷な現実に小さな風穴をあけるかのような、組織を無視した型破りなジェニーの捜査。

未熟な捜査官に肩をすくめながら、それでもその姿にわずかな光を見るように、ベンやコリーも協力します。

捜査の果て、犯人グループと銃撃戦となりますが、コリーの神業的な狙撃もあって犯人グループはほぼ壊滅。

この銃撃戦シーンは、この映画があくまで娯楽映画として成り立っている大きな要素です。リアルでいて爽快感もあり、一瞬の判断ミスが死につながるという緊迫感にあふれたものでした。

犯人グループの最後に残った一人、少女をレイプした張本人をコリーが連れ去り、山中深くで解放し、少女と同じように裸足で逃げてみろと命じます。

あくまで自然に任せ、少女と同じような状況に犯人を置くという選択をしたのです。

その理由は次の台詞に込められています。

「お前がレイプした少女は10kmも裸足で雪原を走って逃げた。勇敢だった。戦士だった。お前も同じく逃げてみろ。100mももたないだろうが」

この台詞が、重苦しい現実の中に監督が差し込みたかったささやかな光のすべてでしょう。

主人公コリーは、「この土地では強いものが生き弱いものが死ぬ。そこに偶然はない」という信念を持っています。

ではレイプされ死に追いやられた少女は弱者だったのか。

きっとそんなことはない。

状況に負けて倫理を捨て、他人から奪いとっていく連中よりも、奪われながらも必死で生きようとした人間のほうがずっと勇敢で強い。

そのことを証すためにも、ラストでは被害者と同じ状況で犯人を走らせ、同様の死に方をさせたのでしょう。

犯人は100mどころか、数mも進んだところで肺を破裂させて死にます。

事件は終わり、コリーは仇討ちの報告を少女の父にしますが、それで胸が晴れることもなく、ひたすらまた重い現実が続いていくだけです。

それでも、現実に戻る前に少しの間だけといって座りこみ、死んだ娘を想う父親。

同じ父親として、それに付き合う人種の違う友人。

彼らの後ろ姿の上を、冷たい風が吹きわたっていく。

ささやかな希望ともいえないそんな光景が、乾いた叙情をもたらして映画は終わります。

「このウインドリバーでは女性失踪の統計がない」という戦慄のテロップとともに。

 

娯楽映画として、社会派映画として

テイラー監督は、今作を上質なミステリーとして、ときには骨太なガンアクションとしての娯楽の外枠に収めながらも、今確かに存在する辺境の現実を観客に見せつける社会派映画として完成させました。

僕などは日本人としてそれでもまだ対岸の出来事と見てしまいますが、現地アメリカ人がこれを見てなおこの「辺境」問題から目を背けることができるとは思えません。

アメリカ人にとって不都合な真実は多々あるでしょうが、決して全ての人々の倫理観にふたをできるものではないはず。

ただ知られていなかっただけのそういった問題を、大きな才能がとりあげることでムーブメントが起こることもある。

テイラー・シェリダンという人物はそういうフィクションを、あくまで娯楽作としてのレベルを保ったうえで世に出せる非常に稀な人物として、今後最も重要なストーリーテラーの一人であると思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完璧な卒業式!「劇場版コード・ブルー」ややネタバレあり感想

「劇場版コードブルー ドクターヘリ緊急救命」を観てきました。

今作には重大なサプライズがいくつかありますが、それらにはできるだけ触れないように、これから観る人も読めるように感想を述べてみます。

 

これまでシリーズを見守ってきた人々へ捧げられた物語

ドラマの初回放送からシーズン3まで、リアルタイムで観続けて10年。

10年あれば見ているこちらも変わるもので、僕も10何の間に職場も仕事も二つ三つ変わりました。

僕は10年間ふらふらしているだけだったけど、最初は現場で何もできず立ち尽くすしかなかった新米フライトドクター4人とフライトナース1人は、いまやそれぞれが救命を背負って立つ、一人前の医師として後輩の指導も行う立場となっていました。

今回の劇場版は、医療ドラマとしての「コード・ブルー」のあらゆる要素を詰め込みながらも、登場キャラクター一人一人にしっかりとスポットを当て、いわば彼らの「卒業式」として、泣きながら、そして笑いながら、10年間走り続けた彼らを祝福することができる、そんな映画となっていました。

 

そんなわけなので、この映画はこれまでのコード・ブルーを見ていない人には意味が半分以下も伝わらない、良くも悪くも内輪向けな造りとなっています。

もちろん医療シーンや災害現場の緊迫感はよく作られていますが、それら自体はそこらの医療ドラマ並といえます。

正直、大事故とそれに立ち向かう医者たちの医療スペクタクル大作だと思って本作を観ると裏切られることでしょう。

今作では事故そのものは主人公たちの医療スキルの成長を描くための装置に過ぎずません。

しかし彼らを最初から見続けてきた者が見れば、緋山の挿管スキルに「ブラインドで一発……⁉︎」と周囲の人々が感嘆するシーンで、「あの緋山がここまでに」と思わず涙腺が緩むわけです。

10年というリアルタイムと3シーズンのテレビ放送という積み重ねが、一つ一つの描写に膨大な意味を付与し、何層にも塗り重なっていく。

わざわざくどい演出を施さなくても、今の藤川の姿に昔の無力な藤川の姿が重なって脳内再生される。

それがこの劇場版「コードブルー」の最大の武器であり、見所と言えるでしょう。

 

医療ドラマとして、それ以上に稀有な青春群像劇として

本編の3分の2は、予告編でも最大の見所として押し出されていた二つの事故、成田空港での飛行機の不時着と海ホタルへのフェリー衝突事故での救命活動が描かれます。

10年で研ぎ澄まされた主人公5人のスキルと、シーズン3でやっと動けるようになってきた新米4人の成長が描かれます。

災害現場以外のシーンでも、コードブルーらしく、死を前にした患者との向き合い方、脳死患者の家族との関わりなどのテーマが詰め込まれ、正解のない難しいテーマが、短い時間ながら説得力を持って描かれます。

この辺りもやはりテレビシリーズで向き合ってきた問題だからこそ、コンパクトでも勘所を外さない扱い方ができたのだと思います。

 

しかし、そんなこたぁいいんです!

この映画の本当の存在意義は、ラスト15分(体感)にあります。

実質的に卒業式といっていいでしょう。

これまで「コード・ブルー」を見続けてきた人達においては、最後の15分ほどのシーンで、そしてエンドロールで必ず報われます。

拍手して、祝福して、とある人物よりのまさかのサプライズに涙し、そして笑えます。

さっきまで笑っていたはずなのに、エンドロール後、まるで長年付き合ってきた同期たちと別れたかのような切ない余韻が残っていました。

 

こんなふうにドラマ内の時間がリアルタイムで進み、それが10年も続いて、視聴者とともに歩める作品というのは本当に稀有であるといえるでしょう。

 

単品作品では絶対に味わうことのできない、リアルに時間が積み重なった果てのドラマの一つの区切りに立ち会うことができる。

終わった後は、まるで自分もまた同期たちと戦い抜いたような気持ちになれる。

そういう気持ちになるように見せてくれる。

それこそがこの作品の最大の醍醐味だと思います。

コードブルーを今まで観てきた人なら、大丈夫!マストです!

 

どうしても言いたいやつ

最後にひとつネタバレ。

僕は藤川が大好きなんですが、ある理由で送られた藍沢から藤川へのビデオメッセージでの「今は俺がお前のようになりたい」で涙腺破裂しました。

これも長い時間を経て、色々あってのこの台詞ということですよねえ。

お幸せに!

 

 

 

「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」を観る前に押さえておくべき用語やキャラクター

ミッション:インポッシブルシリーズ待望の最新作ミッション:インポッシブル/フォールアウト」が8月3日(土)よりいよいよ全国公開となります!

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ミッション:インポッシブルシリーズは今回の「フォールアウト」で6作目。

 

これまでのシリーズを見ていない、あるいは初期作しか見ていなくて近作は追っていなかったという方のために、この記事では過去シリーズから引き継いでいるキャラクターや組織、世界観について簡単に解説していきます。

(解説の都合上どうしても過去作の結末などの内容が含まれますのでご注意ください。)

 

ミッション:インポッシブル」とは?

主人公イーサン・ハント(トム・クルーズ)はCIA内部の秘密組織IMFに所属する凄腕スパイ。

彼とそのチームが、「遂行不可能」と言われるミッションの数々を超絶的な技能と機転で達成し、事件の裏で暗躍する犯人を追い詰めていくスパイ・サスペンス・アクション。

元となる作品はテレビドラマシリーズ「スパイ大作戦」(邦題)ですが、ストーリー上の繋がりはない。

 

主人公イーサンが所属する「IMF」とは?

アメリカ中央情報局(CIA)の特殊作戦部Impossible Mission Force、略して「IMF」。

秘密組織として、公にはできない暗殺や諜報を任務とし、たとえ任務中にエージェントが監禁、殺害されたとしても当局は一切関知しない、という過酷な規定が定められている。

 

「シンジケート」とは?

前作「ローグ・ネイション」に登場した、世界各国の元スパイ達が作った世界的な犯罪組織。

サブタイトル「ローグ・ネイション(ならずもの国家)」とは彼らのこと。

世界各国の要人暗殺を計画、遂行する。

ボスであるソロモン・レーンとともに「フォールアウト」でも重要となるのか?

 

押さえておくべきキャラクター

イーサンとチームを組むメンバー

・イーサン・ハント(トム・クルーズ)

1作目から通してこのシリーズの主人公となる超凄腕スパイ。

洞察力、身体能力、潜入時の機転、射撃など全てにおいて超一流。

一作目では若手エージェントでしたが、シリーズを経て今ではIMFの伝説的なベテラン。

しかし落ち着きを見せるどころか無茶の度が一作ごとにエスカレートしていく危険なイケメン。高いところが大好き。

シリーズではいつも演じるトム・クルーズの体当たりアクションが話題になるが、そのアクションのほとんどは敵との戦闘というより、潜入不可能といわれる施設などへの潜入ミッションの一部として描かれている。

ちなみに3作目より結婚した奥さんがいるが、今作でも登場が決まっており、イーサンの運命をどう導くのか注目される。

 

・ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)

イーサン以外で唯一のシリーズ全作皆勤賞キャラクター。

1作目ではIMFを解雇されていたが、イーサンに誘われてチームを組み、その手柄からIMFに復帰、その後はイーサンのもっとも信頼する相棒として影に日向に活躍する。

凄腕のハッカーであり、自分の腕に自惚れスレスレの誇りを持っているが、常に無茶をするイーサンを抑える女房役でもある。あまり露出のない作品でも影で動いていることが示唆されるなど、重要なキャラクター。

 

ベンジー・ダン(サイモン・ペグ)

3作目から登場。

登場時は内勤だったが4作目以降外回りもするエージェントに。

ルーサーに代わってイーサンの相棒を務めることも。

主に電子戦などの後方支援が得意。

演じるサイモン・ペグはコメディアンが本職だが今や売れっ子の俳優でもあり、緊迫するシーンが連続する中での貴重なコメディ要員でもある。

 

・イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)

「ローグネイション」より登場。

英国のMI6所属の女スパイで、復職のために「シンジケート」に潜入していた。

MI6の上司アトリーと、シンジケートのボスレーンの双方に翻弄されるが、イーサンに協力してレーン逮捕に貢献し雪辱を晴らす。

イーサンとは恋仲というより同じエージェントとして馬が合うらしく、打ち合わせもせずに絶妙のコンビネーションで窮地を切り抜ける。

「フォールアウト」予告編では敵に回ることを示唆するような台詞も見えるが、果たして。

 

・ウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)

「ゴースト・プロトコル」より登場。

登場時はIMF分析官としてイーサンを補佐する。

実は腕の立つエージェントであったが、以前イーサン夫妻を陰ながら護衛する任務についており、ジュリアを死なせたという自責からエージェントをやめている。

ジュリアが生きていたことを知り、改めてIMFのエージェントとして活動することに。

「ローグ・ネイション」では、IMFを危険視するCIA長官アランとの間をうまく調整するよう立ち回り、最終的にIMFを復活させるよう仕向け、アランをIMF長官に迎えた。

イーサンとは対照的に政治的な立ち回りをも考慮して動く慎重派。

そのためイーサンのチームに絡むと苦労人の役割を担わされがちである。

ジェレミー・レナーが多忙のため「フォールアウト」にはクレジットされていないが、サプライズ出演はあるのだろうか?

 

その他の重要キャラクター

・アラン・ハンリー(アレック・ボールドウィン)

元CIA長官、現IMF長官。

前作「ローグ・ネイション」ではIMFを危険視し、イーサンが「シンジケート」を捏造した上で暴走していると信じて指名手配、IMFを一度は解体に追い込む。

だがブラントらの働きにより「シンジケート」の実在と危険性を認識し、イーサンらに協力。その後自ら復活させたIMFの長官についた。

今作でも長官としてイーサンらの上司としての登場かと思われるが、今回は敵となるか味方となるか?

 

・ソロモン・レーン(ショーン・ハリス)

前作「ローグ・ネイション」の敵役。

謎の犯罪組織「シンジケート」のボスで、世界各地の首相や要人の暗殺事件を起こす。元々は英国MI6のスパイであり、「シンジケート計画」を任されたが、そのまま出奔し犯罪者となった。

一度はイーサンをも生け捕りにし仲間に取り込もうとするほどの実力者で、部下の失敗が続くと自ら出てイーサンらを圧倒するなどした。

最後は特製の防弾ガラスの檻に誘い込まれ、逆に生け捕りにされた。

しゃがれたような声が個性的であり、日本語吹き替えでもバイキンマンなどで有名な中尾隆聖が担当した。

シリーズ屈指の不気味な存在感を放つ敵役。

「フォールアウト」での再登場が決定しているが、その性格からも味方になることは考えにくいが……?

 

新たなキャラクターたち

シリーズに既に登場済みので、本作でも重要な役割を果たしそうなキャラクターを中心に解説しました。

しかし今作「フォールアウト」には他にも初登場となる魅力的で一癖も二癖もありそうなキャラクターが登場するようです。

中でも「マンオブスティール」から「ジャスティスリーグ」までスーパーマンを演じ、すっかり最新のスーパーマン俳優として定着したヘンリー・カヴィルが、CIAの凄腕エージェント、オーガスト・ウォーカー役として登場します。

イーサンとのアクションがあるらしいので、敵ポジションとなるのかもしれません。

なにしろスーパーマンなので、絶対強い。

大変楽しみです。

 

気になるストーリーは?

今作はプルトニウム強奪事件からはじまり、世界3つの都市での同時核攻撃が計画されます。

イムリミットは72時間。

阻止に動くイーサンらIMFメンバーですが、CIAや「シンジケート」も絡んだ巨大な陰謀が蠢き、またイーサン個人にも不吉な運命が!?

 

予習としてはストーリーは最低限にしておきたいところなのでこのへんで。

 

死に場所を探すがごときトム・クルーズの活躍を見よ!

とにかくトムのノースタントアクションの武勇伝のボリュームが半端じゃなく、ほとんどジャッキーチェンが主演であるかのようになっている本作。

目玉である成層圏からのHALO降下は、自身で100回も飛び降りて練習したとか、ヘリのシーンのために免許を取得して撮影と演技と操縦を全部一人でやったとか。

聖徳太子か。

しかしアクションばかりでなく、予習してみるとストーリー上でも過去作からの気になる伏線がたっぷりあることに気づきます。

8月3日(金)の全国公開が楽しみです!

 

劇場版「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」を見る前に押さえておくべきこと

フジテレビ系列で放送され人気を博した「コードブルー ドクターヘリ緊急救命」、その劇場版が7月27日(金)より全国公開となります。

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劇場版公開に先駆けて、今作を見る前に押さえておきたい知識やポイントをおさらいしていきます。

 

コード・ブルー」とは

4人の若者が、医療現場の壮絶な現実の前に無力に立ち尽くすところからはじまり、少しずつ少しずつ成長し進んでいく様を丁寧に描いた傑作医療青春群像劇。

2008年に第1話が放映されて以来10年、現在までにシーズン3までが放映され、若者たちは今や後輩を育てる一人前の医師として活躍しています。

 劇場版の前に押さえておくべきことは?

劇場版はシーズン3の後の話なので、基本的にはドラマが視聴済みであることが前提の物語になっているかと思われます。

今回は、スペシャルドラマも含めて全話をリアルタイムで視聴してきた筆者が、劇場版を見る前に最低限押さえておくべきキャラクターやエピソードをざっと解説していきます。

全話視聴済みの方は見る前の簡単なおさらいに、一部のみ見ていた方は知識の補強にご利用ください。

もちろん、まだドラマ「コード・ブルー」を見たことがないけど劇場版は見に行く予定という方も、この記事を読めば最低限の前提知識は手に入れることができると思います。

 

キャラクター紹介と各キャラのこれまでの軌跡

5人の主人公

・藍沢耕作(山下智久)

翔陽大学付属北部病院救命救急センターに赴任してきた4人のフェローの1人で、赴任当初から抜きん出たスキルを持っていた。

ストイックでクールな性格で、仕事以外のことにほとんど興味がない。

ひとつでも多くの症例を見て名医になるという野望を持ち、フライトドクターもそのための手段と見なしている節がある。

シーズン1では、患者に感情移入せず、困難な症例もあくまで自分の成長のための練習台だと思っていた。

だが、事故でやむなく恩師黒田の腕を切断し医師生命を奪ったことや、入院してきた祖母絹枝との関わりの中で、自分の医療の在り方について深く考え悩むようになる。

シーズン2では父親との関係も描かれ、医師としてだけでなく、人間としても一回り成長を見せる。

シーズン3では同病院の脳外科医として働いていたが、人手不足の救命に請われる形で一時的に再びフライトドクターとなる。

新たに配属されたフェロー達には厳しい態度で臨むため嫌われがちだが、恩師黒田の教え方に似た、とにかくやらせて駄目なら引き取るという方法をとり、褒めるときは褒めるため、図らずも徐々にフェローから信頼を得ていく。

また、シリーズ当初は無関心だった同期たちに対しても、幾多の苦難を共にすることで徐々に信頼し、災害現場での指揮のミスへの自責の念に悩む白石に対し「お前だから命を預けられる」と言った言葉をかけたり、初めは劣等生だった藤川に対し「お前はすごいよ。もう救命になくてはならない存在だ」と素直に賞賛するなど、心を開く場面が目立った。

最後には脳外科医として世界でもトップクラスの症例数を誇るトロント大へと赴任することになる。

他のメンバーと違うのは、外科医としての技術について己の無力に悩むという場面がほとんどなく、主に患者と自分の距離感について、自分の医師としての在り方について思い悩むことが多い。

 

・白石恵(新垣結衣)

4人のフェローの1人として赴任、フライトドクターを目指す。

生真面目な性格で優等生タイプ、たまに天然が入る。

赴任当初はヘリで現場へ行っても何もできず、自分の無力さに打ちひしがれることに。

現場で事故から自分を庇った黒田が腕を切断し医師生命を絶たれたことから自分を責め、一時はヘリに乗ることができなくなった。

しかし黒田の「誰よりも多くヘリに乗れ」という言葉を受け、フライトドクターとして成長していく。

その真面目で冷静な性格からリーダーの役割を担うことが多く、また大規模災害現場でのトリアージ(優先順位付け)という辛い役割を担うこともある。

シーズン3ではスタッフリーダーとして黒田の救命チームを越えることを目指しているが、慢性的な人手不足や、フェロー達への接し方なども思うようにいかず、藍沢の無自覚な教育のうまさに悔しがることもあった。

主に現場でのリーダーシップについて悩むことが多く、患者のみならず医療スタッフの命までも預かる責任の重さに、押しつぶされそうになりながらも歯を食いしばってメンバーのために奮闘する姿が描かれる。

また思い悩む藍沢を後ろから後押しすることも多い。

寝相が異常に良く、棺桶に入っているような姿勢で仮眠していることがあり、藍沢がびっくりする珍しい場面がある。

 

・緋山美帆子(戸田恵梨香)

4人のフェローの一人。プライドが高くがさつな性格だが、情に厚く誰よりも患者に寄り添う。

フェロー時代は主に三井の側で学び、影響を受ける。やはり当初は現場では何も出来ず無力を思い知らされた。

三井が見守る中、患者への麻痺の告知など難しい問題をこなしていき成長していく。

シーズン2では患者への感情移入が原因となって医療訴訟騒ぎを経験し、それが元で患者と接することにトラウマを抱くようになってしまう。

ラストに起こる飛行機不時着事故での患者との関わりの中でそのトラウマを克服し、患者に寄り添う医師として歩んでいく。

シーズン3では周産期医療センターに勤めていたが、人手不足の救命に戻るよう恩師三井に頼み込まれて戻ってくる。

そのキャリアを生かし、現場でも妊婦への検診・処置や突発的な出産への対応を得意とする。

患者としてやってきた元料理人の緒方と恋仲になるが、自らのキャリアの今後について、恋と仕事について悩みが尽きない。

藍沢とはまた違った意味で患者との向き合い方に苦悩する立ち場であり、それを持ち前の熱さと優しさで突破していくため、啖呵を切る場面も多いが不思議と憎まれないキャラ。

ちなみにスペシャルドラマでの列車からの転落、シーズン3でのエボラ出血熱への感染疑いなど、救命で最も多く死にかけた人物である。

 

・藤川一男(浅利陽介

4人のフェローの一人で、もっとも出来の悪い劣等生だった。生来お調子者の性格だが、なにごとにも粘り強く、簡単には折れない。

シーズン1では、赴任してからミスを繰り返し、電気ショックで患者もろとも感電するなどの失態に、黒田からも「他の病院へ行け」と勧告されるなど、戦力外の烙印を押され、シーズン最終話までヘリに乗ることができなかった。

だが、辞めろと言われようと「ここしかない」と思いをぶつけ、最終的にヘリに乗って災害現場へ向かうことになる。

スペシャルドラマでは、やはり新任でパニックに陥っているレスキュー隊員を自らとだぶらせて穏やかになだめ、藤川を一度は諦めかけていた黒田の指導のもと、困難な状況で初めてのケースの手術を成功させるなど著しい成長を見せた。

シーズン2では冴島に思いを寄せ、恋人を亡くすことになる彼女にやさしく寄り添い、励まし続けた。

シーズン3では、藍沢をして「お前はもう救命になくてはならない」と言わせるほど、医師として、人間としての成長を遂げ、相変わらずのお調子者の性格ながら、困難な現場で自らが負傷しながらもまず患者のことを考える医師としての姿を見せつけた。

自分が出来のいいフェローではなかった自覚からか、新たな3人のフェローに対しても基本的に声を荒げることもなく、いい兄貴分といった立ち位置で見守っている。

冴島と同棲しており、彼女のおなかに子供もいたが流産。冴島が自らを責め苦しむ中で共に悲しみ、「大切な人を失い続けてきた彼女に自分までも失う思いをさせてはならない」と、危険と隣り合わせのフライトドクターを辞める決意をするが、冴島の願いにより最後はとどまった。

劣等生としてはじまり、全シーズンを通してもっとも無力感を味わい続け、もっとも伸びしろをみせた人物。

僕は藤川の顔を見るだけで泣けます。

 

・冴島はるか(比嘉愛未

フライトドクターと共に現場に急行し医師をサポートするフライトナース。

並みの医師をしのぐスキルと知識を持つが、医師になりたくてもなれなかった過去を持つ。

そのため医師のくせに現場であたふたするしかないフェロー達を最初は見下すようにしていたが、彼らと現場を共にするうちに徐々に認めていく。

シーズン2では、不治の病におかされた恋人の田沢との関係がフューチャーされ、藤川に励まされながら最期まで寄り添い(最後の瞬間はフライトが入り看取れなかったが)、気持ちに区切りをつけた。

シーズン3ではつらいときに側にいてくれた藤川と付き合っており、同棲して妊娠もしている。

だがフライトナースの仕事も面白く、結婚して家庭に入るという選択を思いきることができないでいた。

おなかの子を流産し、「私はいいお母さんじゃなかった」と深く傷つくが、藤川とともに悲しみに向き合いながら現場復帰を果たす。

10年を経て冴島のスキルは現場でもなくてはならないものとなっており、医師たちの意図の先を読んでサポートし、アクロバティックな治療にも的確についていくなど、後輩ナースの幸村にその存在感を見せつけた。

基本的には気が強く、怒らせるとすごく怖い。冴島がいることを知らずに白石と緋山が彼女の悪口を言いあっている現場に居合わせた藍沢が「お前ら勇気あるな」と慄いていたほど。

当然藤川は彼女に頭があがらない。

現場での力強く凛とした姿と、最愛の人を亡くし続ける悲しみと脆さを併せ持つ人物。

 

 5人の主人公を導くシニアドクター達

・黒田脩二(柳葉敏郎

湘北救命センターのエースにして、ドクターヘリ事業設立の立役者。

藍沢らフェロー達を教える立場だが、無能なだけのフェローを嫌っており、使えないと判断すれば切り捨てることをためらわない。

だが医師としては一流であり、また真摯に医療に向き合う姿勢が藍沢達に影響を与えていく。

外科医としては一流の腕だが、傲慢な性格が災いして家庭生活は失敗している。

シーズン1にて事故のため腕を使えなくなり、外科医としての生命を絶たれる。

一時は意気消沈し病院を去るも、その後のシリーズではフェロー達に口頭で手術のアドバイスをするなど影響力を発揮した。 

現在は産業医をしているらしく、妻子とも和解し家庭生活も取り戻しつつある。

藍沢達フェローが最も認められたい恩師であり、劇場版での再登場が期待される一人です。

 

 ・三井環奈(りょう)

シニアドクター。産婦人科医を専門とする。

やさしさと厳しさを併せ持ち、特に白石や緋山とは同じ女性ということもあってか関わりが深い。

橘とは元夫婦で、優輔という心臓の難病を抱えた息子がおり、シーズン3では息子のために人手不足の救命を離れざるを得ず、緋山のキャリアに不利となることを承知で戻るように頼み込んでいる。

一度は医療の現場を離れたが、息子も治療が成功したことで、劇場版で再び勇姿を見ることができるのでしょうか?

 

・森本忠士(勝村政信

シニアドクター。

いつもヘリのオペレーター室でだべっている、おちゃらけたキャラの医師だが、フライトドクターとしては百戦錬磨。

主に藤川の面倒を見、落ち込むことの多い彼を何かと無責任に茶化したり励ましたりしている。

シーズン3では登場せず。

劇場版で再登場なるか?

 

・橘啓介(椎名桔平

シーズン2より登場。黒田の後任として配属されたフライトドクター。

ひょうひょうとした性格でいつも冗談を言っているようだが、脳外科医の西条に指導され、腕は確か。

フェロー一人ひとりをしっかりと見ており、白石をスタッフリーダーに抜擢したのも彼女の特性を見抜いてのこと。

三井との間に優輔という息子がおり、心臓移植のドナーの適合者が現れるのを待っている。しかしそれは取りも直さず息子と同じ年頃の子供が死ぬのを待つことと同義であり、それを見抜かれて息子に「新聞で子供が死んだニュースを探すお父さんが嫌い」と言われてしまう。

シーズン3では人手不足の救命と息子の難病とで頭を抱えている場面が多く、あまりフェロー達に関して突っ込んだ関わりを持つこともできなかったようだが、息子の問題が解決した今、さらなる活躍が期待されます。

 

シーズン3より登場の新たなフェロー達

・名取颯馬(有岡大貴)

シーズン3で新たにやってきた3人のフェローの一人。

大病院の息子で、父に言われて仕方なく配属された。

いまいちやる気が見えず、失敗しても「次頑張ればいい」と言い放って「次はないんだよ」と白石の叱責を買う場面もあった。

失敗すると焦りと反発から心にもないことを言ってしまう癖があるが、その実罪悪感にかられていることも多く、最後には素直に失態を取り返すべく行動することも多い。

主に緋山に面倒を見てもらっており、彼女にひそかに片思いしている。

 

・灰谷俊平(成田凌

シーズン3で新たにやってきた3人のフェローの一人。

自分を助けてくれたフライトドクターに憧れて目指しているが、要領が悪く、人付き合いも苦手と、自分に自信がなく、常に劣等感に悩んでいる。

フライト中に患者を思ってパイロットを急かすような言動がきっかけとなってヘリが不時着してしまい、そのことがトラウマとなってヘリに乗れなくなってしまう。

(この時のエピソードが7月28日(土)に劇場版公開記念スペシャルドラマとなってフジテレビ系列で放送予定)

シーズン3最終話では病院に残って搬送されてきた患者を診るが、注意深く根気強い観察によりわかりづらい症状を見事に見抜き、患者を救っている。

 

横峯あかり(新木優子

シーズン3で新たにやってきた3人のフェローの一人。

テレビドラマ(救命病棟24時)を見て憧れて医者になった。

最初の現場ではパニックに陥り何もできなかったが、藍沢に諭され落ち着きを取り戻すと治療プランを的確に示すなど、本来の能力の片りんを見せた。

性格は今風のとらえどころのない女性に見えるが、誰とでもうちとけることができ、気難しい雪村や、おどおどしがちな灰谷ともわだかまりなく話ができる。

全力を尽くしたうえでの判断が患者を死なせるなど、手痛い失敗も多いが、着実に成長を見せる。

 

 ・雪村双葉(馬場ふみか

 新人フライトナース。

3人のフェローとほぼ同期であるが、とにかく早くひとり立ちしたいという思いが強く、ベテランナースの冴島にもライバル心を隠さないほど独立志向が強い。

周囲にもとけこもうとしないためとっつきずらく、また患者との精神的な付き合いをナースの仕事ではないと割り切っている。

だが冴島の仕事ぶりを見せられ、徐々にフライトナースとしての幅を広げていく必要を感じ始める。

劇場版では彼女の母が登場し、重要な役どころとなりそうです。

 

 

「ドクターヘリ」とは? 

ヘリを使用して、救急搬送が間に合わない病気、事故や災害現場に直接医師を送り込むことで患者の生存率を上げる仕組みのこと。

 翔陽大学附属北部病院救命救急センターは全国でも有数の「ドクターヘリ」を導入した救命救急センターであり、千葉県全域へとヘリで医師を派遣する。

その現場に乗り込む医師が「フライトドクター」であり、現場でレスキュー隊員や消防、警察などのチーム全体を統括・指揮することもある、高いスキルを持ったプロフェッショナルでなくてはならない。

「ドクターヘリ」にはパイロット2名のほか、主にシニアドクター1名、フェロードクター1名、フライトナース1名が乗り込む。

 

劇場版では「成田空港航空機不時着事故」と「海ホタルフェリー衝突事故」が同時に発生、どちらも翔北救命救急センターの管轄範囲であることから、彼らの一番長い日となることが容易に想像できます。

 

以上、劇場版「コード・ブルー」を見る前に押さえておくべきキャラクターや設定の解説でした。

今作は医療現場をめぐる群像劇ということもあり、各シーズンのあらすじを追うことはそのままキャラクター達の軌跡を追うということでもあったので、このように人物紹介の中で全体の大まかなあらすじをも追えるよう努めました。

少しでも参考になれば幸いです。

劇場版「コードブルー ドクター・ヘリ緊急救命」、10年走り続けてきた彼らの行く末をぜひ劇場で見届けましょう!

  

 

 

誰もが未来に枝を伸ばす。「未来のミライ」感想

細田守監督の最新作「未来のミライ」見てきました。

細田守監督作品は、ワンピースなどのシリーズ作品でやったもの以外はたぶん全て見ています。

その上で、見た感想を述べてみます。

ネタバレなどはほぼ影響のない作品かと思いますので、特にストーリーを伏せたりなどはせず書きます。

どうしてもネタバレが嫌な方はご注意ください。

 

あらすじ

主人公くんちゃんは4歳の男の子。未来ちゃんという妹が生まれ、両親はてんやわんや。妹にかかりきりの両親に、まだかまってほしい盛りのくんちゃんは面白くないと泣きさわいでばかり。

そんなくんちゃんが庭に出る度に、犬のゆっこが人間の姿になったり、未来の妹がやってきたり、色々な場所に飛ばされたりと不思議なことが次々おこる。

様々な人と出会い、色々な場所にいき、くんちゃんが知らなかった家族の物語を垣間見て、ほんの少しずつ成長していく小さな物語。

 

感想

面白かったかと聞かれたら、わからないと答える。

いい映画だったかと言われれば、いい映画だったと思うと答える。

そんな、なんとも不思議な感想の映画でした。

 

家族の座標をめぐる物語

細田守のシナリオは家族に関するものが多いというのはよく言われることで、今作もやはり家族が中心の物語です。

それも、たぶんこれまでで最もストレートな家族ものです。

家族というテーマの扱い方としては、過去作で言うと「サマーウォーズ」が最も近いかもしれません。

しかし今作の主人公である家族は、どこをとっても「普通の家族」です。

そして、今作で細野守監督が伝えたいメッセージを込めるのに、この家族はどこまでも「普通の家族」でなくてはならないのです。

 

家族と言えども、いや家族だからこそ、集まって暮らせば嫌なことやイライラすることも多いし、むしろそんなことばかりだという人は多いのではないかと思いますが、この映画で描かれるシーンの大半もまたそういう日常で構成されています。

家事に疎い夫、口うるさい妻、子供のワガママ、ギャン泣きなどなど。

そんな、たまには嫌気がさすこともある、どうということもない普通の家族は、しかし「中々どうして捨てたものじゃないんだぜ」というメッセージを、細野監督は「系譜の中の家族の座標」を表現することによって示そうとしているように見えます。

 つまり、この家族がなぜ家族として今あるのか、これからどうなるのか、ということを見せることによって。

 

家で面白くないことが起こると、くんちゃんは庭に出ます。すると必ず不思議なことがくんちゃんに訪れます。

幼いくんちゃんを通して観客が見せられるのは、この家族の十何年か未来の姿であったり、あるいは父と母の子供時代のエピソードだったり、曽祖父の物語であったり。

片付けないと怒る母が、小さい頃はおもちゃ箱をひっくり返すのが趣味でやはり祖母に叱られている。

自転車に乗れなくて泣いていると、めちゃくちゃカッコいい若いひいじいちゃん(CV福山雅治)が馬やバイクに乗せてくれる。

そういう、家族の知られざる一面を垣間見て帰ってきたくんちゃんは、現在の母親をヨシヨシしてあげたり、自転車の練習に奮起したりします。

 

このように、

「くんちゃんが面白くない思いをする」→「庭に飛び出す」→「不思議な体験をする」→「ちょっとだけ成長する」

というパターンが連作短編集のように繰り返されて映画が進んでいきます。

 

 ひとつの樹を成す家族たちの系譜

家族の歴史、というと大袈裟なように聞こえるかもしれませんが、しかし実際に自分の父親と母親の人生のエピソードを集めただけでも結構なボリュームになるのではないかと思います。加えて祖父母、曽祖父母、さらに飼っている犬にだって、うちで生まれたのでない限り家族になる前のエピソードがあるでしょう。

 

作中で、戦時中にひいじいじの船が転覆し、痛みと絶望に叫びながらも必死に泳ぐシーンがあります。(後で小説版をちらっと見たのですが、この船は戦艦長門だったようです。ちなみにひいじいじはこの前に特攻隊に配属されますが飛び立たず生き残っています。歴史の生き証人のような人だったようです)

その後、ひいばあばになる人にプロポーズし、「駆けっこに勝ったら」と言われて足を引きずりながらも挑み、結局ひいばあばが脚を止めて結婚したという「言い伝え」のシーンも、くんちゃんは空から目撃することになります。

 

自分でも驚いたのですが、僕はこのシーンで突然ボロボロ泣きました。

なんだかわからないけど泣けてしょうがなかったのです。

ミライちゃんも語ってますが、この時ひいじいじが必死に泳ぐことをやめていれば、あるいはひいばあばが脚を止めていなければ、くんちゃんとその家族はなかった。

言葉にしてしまえばなんとあっけなく味気ない事実ですが、このシーンは本当によかった。

タイムトラベルものでは定番ともいえる、自分のルーツを目撃するシーンではあるのですが、がっつり演出せずに他の過去の断片シーンの中にあっさりと紛れ込ませてあったのが不思議なツボに入ってしまったのかもしれません。

 

個人的な話ですが、僕の祖母は北海道の海で船を魚雷に沈められ、赤ん坊だった僕の叔父を亡くしています。他にも多くの犠牲者が出たわりと有名な事件で、祖母の話はあまり聞いていませんが、事件の調査記録をまとめた映画などにもなっており、おかげで僕も詳細を知ることができています。

祖母は当時自殺も考えていたそうですし、実はこの映画のラストに流れる犠牲者名簿にも祖母の名前が誤って記載されていました。

死んだことになっていたようです。

それほどの惨劇でした。

この時、祖母が生還していなければ、自殺を思い留まっていなければ、また祖父とやりなおして家族を作ってくれなければ、僕は存在していません。

多くの人が、自分の祖先はよく生き残ってくれたと漠然と思うこともあると思いますが、実際にそういうエピソードの詳細を知ることになると、なんとも生々しい感覚になります。

 

同じように、僕が今ここにいることで、また生き続けることによって、誰かが、あるいは何かが存在することができた、ということもきっとあるのだろうと思います。

 時として、人間は自分以外の世界が全て嘘っぱちなのではないか、と疑えてしまう生き物です。

そんなときにこういった家族や周囲の人の歴史を考えてみると、どうも自分のことばかりでもいけないなという気持ちになったりも。

作中で家族の系譜は、葉をインデックスとするひとつの大きな樹として表現されていますが、きっと僕に懸命に枝を伸ばしてくれた祖父母や両親の葉も、その僕から伸びている枝や葉もあるのでしょうから。

 

肩の力を抜いて眺める日常映画としてオススメ

グダグダと長くなりましたが、読み返してみれば、見事に僕もくんちゃんになって映画を体験していたようです(笑

 絶賛しているようですが、もう一回見たいかというと、じつは微妙で。

映像的には退屈なシーンも結構ありますし、とにかく物語としては脈絡に乏しく、カタルシスやクライマックスを求めるような作品ではありません。

家族持ちが見たらたぶん全く違う見え方をするんだろうなぁとは思います。ちなみに僕は独身の中年です。

だからもし自分が結婚して家族を持って、色々悩んだりしたらまた観るのがいい気がします。

 

スペクタクルもアクションも特にない、普通の家族をめぐる、こじんまりとした、しかし実はどこまでも広がりのあるいい映画だったとは思いますので、家族のことでモヤモヤしてる人、じんわりいい気持ちになりたい人にはオススメいたします!

 

はじめてみた

とりあえず、読んだもの、遊んだゲームを終えた後、「ハイ次!」と行くのが若干むなしく感じてきたため、功利主義ではないが、何かしらの成果を目に見える形で残しておきたいがための記録集積所として使っていきたいと思います。

頭の中で思っているのと、書き出してみるのとでは、多くの場合全く違う形になる。

どちらが本当というわけではないと思っていて、明文化される前の頭の中にあるモヤモヤの状態が大事であることも多々あると思う。

書き出してみるということは、摂取した情報に対する自分の解釈や感想や感触が自分の中で混沌としている状態を、ハサミやナタやカッターでザクザク切り落として整え、意味の通るものに変換する行為だと思う。

やっかいなことに、そういう加工を施して意味を与えないと人間はその混沌としたものを保持し続けることができない。

なにかしら、自分がした行為が下のほうに溜まっていっているという実感が欲しいというのもある。

ということで、のんびり本の紹介やゲームの紹介や、その他徒然事を書き残していければと思います。

よろしくお願いします。